震災当日・その3

3月11日、勤務先の病院で地震に遭い、大規模災害時のトリアージ体制のもと、職務を続けました。
携帯のメールは何度もエラーが出ながらも、なんとか家族の無事だけを確認することができましたが、171の災害伝言ダイヤルは全くつながりません。公衆電話のほうが通じやすい、ということは後で知りました。息子の小学校も娘の保育園も、非常時には災害伝言ダイヤルを利用する、ということを言っていて、月に1回テストでかけてみたりしていましたので、かろうじて171という番号は覚えていたのですが、使えませんでした。
携帯も、ある時間帯から圏外になってしまいました。通信規制をしたのだろうなと思いました。
信号のない暗い道路、しかもどこに地割れがあるかもわからない状態で運転をする自信はありませんので、帰宅できる職員は帰宅しても良いことになりましたが、私は泊まって翌日早朝に帰るほうが良いと判断しました。
病院から、比較的近い場所での火災が見えました。空全体が赤くなっていて煙が見えるくらいですので、何の火災なのかわからず、住宅などだったらこちらに拡がって避難する必要がでてくるかもしれない、と不安になりました。本部に報告したところ、「仙台新港の石油コンビナート火災ではないか」と言われましたが、はっきりとはわかりませんでした。しかし、数時間後には、噴火でもするように激しく火が吹き上がるようになったため、石油コンビナート以外でこんな燃え方はしないだろうなと、変な確信をもちました。
病院食は確保されていましたが、職員の食べ物はありません。私の病院は職員食堂がなく、すぐ隣に、お弁当などを届けてくれる、同系列の売店があります。そちらから、在庫のお菓子などを持ってきて、本部から職員用に配られ始めました。
全く食欲の出ない人もいましたが、こういう時は食べておかなきゃ、と思い、私はせっせと食べました。病院職員というのは、普段から不規則な食事や睡眠には慣れているので、サバイバル向きかもしれません。
津波の影響のある地域でしたので、何時間も水に浸かっていて救出された低体温の人がぽつりぽつりと救急車で搬入されたり、自家用車で来院したりするようになりました。
トリアージというのは、入り口を一本化して、まず重症(赤)、中等症(黄)、軽症(青)を見分けてから治療場所を指示する大事な振り分けのことです。他に、死亡(黒)があり、残念ながら、災害時には、そういった方はすぐに安置場所へと運ばれ、死者への礼を十分に尽くす時間は与えられません。家族と連絡がつかないことも珍しくありません。私の病院には、近隣市町村のショッピングセンターの天井が落ち、下敷きになって亡くなった子供さんが運ばれました。親御さんは、一緒に受け入れる予定でしたが、救急車が津波の影響でたどり着けなかったのか、詳細は不明ですが、別の病院に運び込まれて重体とのことでした。
災害時の医療は、通常の医療とは違います。私も、年に1回の訓練を数回行っただけですが、物資の限られる緊急時には、黄と判定された患者さんをいかに助けるかが重要です。赤の方は、最初から重症ですので、高度な医療や十分な薬剤などを利用できない状況では、救命が困難です。今回の災害では、低体温の方がたくさん搬入されると見込まれました。軽症ならば、十分に保温するだけで回復が期待できます。なので、今回は低体温の方は自力で歩けても(通常はこういう人は「青」ですが)黄色ブースで治療、ということになりました。電気も限られているので、暖房を切っていましたが、黄色ブースだけは低体温治療用に温めることにしたのです。
訓練の際には、軽症の「青」の人たちが、治療を後回しにされるため苦情を言ったりパニックになったりするので、その対応が必要になる、という設定がありました。今回は、低体温の方が多く、青の患者さんじたいが少なかったので、そういった問題はなかったのですが、病状としては「帰宅可能」と判断しても、自宅が壊れていたり、家族と連絡がつかないために迎えを頼むこともできない、ということで、病院から帰宅できない方が多数いらっしゃいました。本当に軽症の方に関しては、近所の避難所まで職員が誘導して連れて行く、という仕事まで出現しました。家族と連絡がつかない人にとっては、病院にいるのかどうかもわからないわけですから、待ち合わせ場所としては避難所のほうが適当です。
明るくなるにつれて救助も進み、これから病院は忙しくなるのだろうなと思いましたが、私もシングルマザーですので自分の家庭が心配です。また、ガソリンがあまりないので、一度帰宅したら、しばらく病院に来れないだろうなと予想されましたので、そのあたりは上司と相談して、しばらく自宅待機となるのもやむを得ない、ということになりました。緊急時であり、通常外来は閉めるので、心配しないで、と温かい言葉をいただきました。
3月12日、朝6時すぎに病院を出発しました。にほんブログ村 子育てブログ ワーキングマザー育児へ
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